はじめて「たんとすまいる」へ事前相談の電話をしたとき、僕はとても緊張していた。
自分の人生はこれからどうなってしまうのだろう?
自分が壊してしまった家族関係をどうすれば修復できるのだろうか?
妻は僕のことを許してくれるのだろうか?
DV加害者として周囲の人たちから、どのように見られるのだろう?
果たしてこの先、生きていけるのだろうか?
加害更生プログラムで自分の行いを激しく糾弾されるのではないか?
不安は尽きなかった。
また、だからこそ、なかなか初めの一歩を踏み出すことができなかった。
それでも勇気を振り絞り、事前相談を経て全3回の基礎講座に申し込むと、1回目の講座で「参考図書」の紹介があった。
‟これらの本はこれから自分を変えるために、すべて参考になるものです。読む順番はどれからでもいいので読んでください”
そう言われて、片っ端から読んでみた。
最初に手に取ったのは「DV・虐待加害者の実態を知る」だった。
僕には受け入れられないような、ひどい暴力を振るう男たちのことが書いてあった。パートナーを殴る、脅して精神的に追い詰める、他人の前で辱める、そんな事例がいくつも書いてあった。
でも、僕にも本の中の男たちと同じような言動や思考があることは、事実だった。
「人間関係をしなやかにするたっとひとつのルール」や「怖れを手放す」を読んだときは、目から鱗が落ちる思いがした。
自分には歪んだ思考や支配的な言動があること。でも、それは慣れ親しんできたものであるだけで、これからは練習次第でいくらでも変えられることが書いてあった。また、僕は自分を守るために周囲に対して怖れを抱いていることがわかった。他人と温かい関係性を構築するためには心を開くことが大切だとわかった。傷つくことを怖れる必要がないこともわかった。
その他、支配的な大人の言動が子どもに対して与える影響などについても知ることができた。
これまで知らなかった知識を得て、「自分は変わることができるかもしれない」という気持ちになった。
でも、プログラムに参加してみると、そう簡単にはいかないということがわかってきた。
思い通りの成果が得られないとき、正直に言うと僕は途中で何度も投げ出したくなってしまった。
「こんなことをして意味があるのだろうか」、そう思った。
自分の暴力性を棚に上げて、妻を批判する気持ちになってしまったことも何度もある。
僕はこれまでも、そうして他人のせいにして生きてきてしまった。
だから、ここで投げ出すわけにはいかない、と諦めずに何度も何度もグループに参加し続けた。学び続けることが仕事や食事のように当たり前の習慣となるように。
そしてプログラムに参加して4年目の今、僕の生活の中でそれは当たり前になった。
同じグループに参加している仲間が「自分にとってグループは日々の落ち込みや怒りをリセットする場所」と言っていた。
僕にとっても自分がふらつかないように意識し続けるために必要な場所だと思っている。
加害更生プログラム参加の動機や理由は人それぞれだと思う。
でも、みんなに共通していることは、自分たちの暴力によって傷つけてしまった妻や子ども達に対する責任は果たしていかなければならない、ということだと思う。
変わるための初めの一歩は本当に勇気がいる。
継続することも本当に根気が必要だと思う。
妻と衝突してしまう(妻に暴言・暴力をしてしまう)自分をどうすることもできなくて、僕は悩んでいた。
暴力を手放せない苦しみは当事者にしかわからない。
同じように困っている人がまだまだたくさんいるだろう。
僕たちの「体験談」が、そんな人たちの希望になれたら嬉しいと思う。
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