共同親権について考える

政府は離婚後も父母双方が子どもの親権をもつ共同親権を導入する改正案を可決・成立させ、2026年以内に施行される予定です。現行では離婚後に父と母どちらかが子どもの親権を持つ「単独親権」のみですが、今回の法改正での共同親権導入は我々DV加害者にも関連する事項です。
それに伴い多くの意見があり、メリット・デメリットが論じられていますが、共同親権導入に踏み込むにはまだ議論の余地があると考えます。
その中に、家庭裁判所がDVや虐待があると認めた場合は単独親権を維持するというものがありますが、身体的DV、精神的DV、経済的DVなど異なるDVをどのような基準で判断するのか? またDVが認められた場合に単独親権に戻すだけではなく、加害者への罰則などの適用も十分に議論しなければならないのではないかという問題もあります。
 
DV被害者にとっては、この共同親権制度により加害者と関係を持たなければならないという不安があり、自分と子どもの安全にも関わることです。
これは個人的な所感ですが加害行為を認められようが認められなかろうが、ほとんどの加害者は加害行為を認めていなく、こうなるまでの経緯は相手の非があるからで、自分の行為には正当性がある。と本気で考えているからではないでしょうか。
私自身も家族にDVをしていた際は「相手が間違っていて、自分は正しい」という価値観から家族への行為を暴力と認識していなく、結婚や子どもを持つことがステータスと考えていたので、パートナーや子どもは自分の生活の一部であるから自分の意にそぐわなくなることが許せない。自分の社会的地位や名誉を傷つけたくない。そしてそれが家族によって引き起こされていると思い込むことで、さらに相手への非難が強くなりました。
 
現在は別居とグループで学ぶことで自らの加害行為を自覚し、家族の許しがあるなしに関わらず贖罪のために生きることを選択しましたが、DV加害更生プログラムに出会わなければ家族との関係はさらに問題となっていたことでしょう。そうなればまともに家族と関わることなどできなくなり、パートナーと子どもの安心安全が保たれなくなります。このことは私に限らず誰にでも起こり得ることであり、共同親権が導入される際に被害者が最も恐れることです。
 
そしてどんなに加害者が更生のために学び続けていても、加害行為をした過去は決して覆されることはありません。被害者であるパートナーや子どもは暴力を受けたそのときの言葉、痛み、恐怖、怒り、悲しみ、苦しみの記憶が消えることはありません。はたしてその状態で共同親権が成り立つのでしょうか?
たとえパートナーや子どもへのDVはなかったとしても、子どもにとってはどちらかの親と別れなければならないという状況が、精神に与えるネガティブな影響は少なからず存在します。
単独親権も共同親権も子どもの健康、教育、愛情など子どもがより良く生きていくための制度であり、大人の利権のためにある制度ではないことを今一度認識する必要があると思います。たとえ離れていても相手を思いやる支援の形はあるのですから。

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