レジリエンス(水槽を眺めながら)

 人生は、実に様々な事象に彩られながら進む。そして、そこには多様な感情行き交う。

期待、興奮、喜び、感動、落胆、悲しみ、怒り、恨み。

平穏な日々においては、私たちは前向きで、 “何かWhat)”を達成することに価値を見出す。

一方で、困難に直面する日々においては、私たちが“どう(How)”乗り越えるかに本質的な価値があるのだと思う。

逆境をどう受け止め、どう考え、そしてどう進むのかだ。

 

人生にピンチが訪れた時、人はショックを受け、怒り、落ち込み、悩み、自信を失い、苦しむ。

しかし、同じ事象に対しても、口角を上げて笑みを忘れず、穏やかさを保ち生活を送る者もいれば、悔しさを隠さず怒りと共に眠れぬ毎日を過ごす者もいる。私は、前者の後者に対する差別化の要素として、「謙虚さ」、「永続性に対する懐疑心」、「思慮のある楽観性」の3つの価値観があると考えている。

 

謙虚さ

苦境に陥った原因一部に、能力や振る舞い方等、自分が介在するのであれば、素直に認め、学ぶ勇気があること。

外部的な要因のみのせいにすると、誰かを責め、環境を恨み、自分の不幸を嘆くことに終始する。

自分が完璧であったことを疑わしくある方が良い。

 

永続性に対する懐疑心

悲しみや苦しみといったネガティブな感情が、同じ強度で永久に続くという錯覚をもたないこと。

今の負の感情が、あたかも生涯に渡って少しも変わらないと感じると、将来を悲観し、絶望感に覆われる。

しかし、喜びや興奮が時間の経過とともに冷めていくように、悲しみや苦しみの感情も後退していくことを

頭のどこかで理解している方が良い。

 

思慮のある楽観性

直面している難局ばかりが人生ではないという適当さを持ち合わせていること。

目の前の窮状に目を奪われると、生活を彩る明るい要素(例えば暖かな陽光や誰かからの挨拶といったささいなことも含む)に気付くことがなくなる。

逆境は目の前の現実だが、人生にはそれ以外の要素があることに気付いている方が良い。

過度な楽観はスリルと隣り合わせだが、思考と節度を伴った楽観性は重要な要素だ。

 

私たちが、予期せず身を置くこととなったピンチに直面した時、試されるのは、それでも続いていく人生を取り戻すためのレジリエンスだ。

自分が生きていること、そして人生を構成する多くの要素に感謝する気持ちを保ちながら、上記の3つを体現することは、“How”であり、次の何か(What)に繋がっていると思いたい。

 

文章を書きながら、隣の水槽を眺めてみる。一瞬、泰然と泳ぐ銀ブナと目があったような気がした。「いったいお前に何が分かるのか」と言われた?  いや勘違いだと思いたい。

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